指図権者とは、受託者の行う信託財産の管理・処分・運用等の信託事務について「指図」をする権利を有する方を言います。

それでは、一体どのような場面で登場する方なのでしょうか?
以下、例を用いて説明しますので確認してみましょう。

同族会社の創業者である父が高齢なので、認知症等によって会社運営に支障をきたす前に、保有する自社株を承継者である息子に託したいが議決権はまだ持っていたい、というような場合です。

通常、息子に株式を信託すると、受託者である息子が議決権を行使することになります。
しかし、まだ会社運営を息子に全て任せるのに不安がある場合には、信託行為において、議決権行使の指図権者を父に指定しておけば、受託者である息子は指図権者(父)の指図に従って議決権を行使ことになります。

もし指図権者に父を指定しておかなければ、父の判断能力が低下(認知症等)した場合に、株主総会運営に支障をきたす可能性もあります。

ただ、指図権者を父にしておけば、父の判断能力が低下(認知症等)した場合でも、スムーズに息子が受託者として議決権を行使することができます。

ですので、会社の運営に空白期を生じるなどの経営リスクを未然に防ぐことができます。

但し、指図権者については信託法上の規定がないので、その権限や責任についてはまだ議論の余地が残されてはいます。

また、あまりに強大な権限を指図権者に与えてしまうと、受託者の存在意義が希薄になり信託本来のシステムを無視する結果にも繋がるので、指図権者を多用する場合には注意が必要となります。

なお、事業承継において上記のような信託契約による家族信託を利用する他に、「自己信託」を利用することで同じような状態を実現することもできます。

ただし、自己信託の場合には贈与税等の課税問題が生じることや、認知症対策にならない等の注意点があります。

相続税対策を含めた生前贈与を実現したいのか、認知症による凍結対策をしたいのかなどによって家族信託は使い分ける必要があります。

以上、家族信託の指図権者についての解説です。